直火式小型焙煎機へのこだわり
なぜ直火?
直火式は少量焙煎と非常に相性が良いのです。
美味しいコーヒー豆は、適切に余分な水分が抜けていて、ふっくらと膨らんで豆のしわが伸び、外側から中心まで均一に焼けていることが条件です。
ふっくらと焼けているコーヒー豆は、抽出時にお湯をよく吸い込んでくれるので、コーヒーの旨味エキスがたっぷりと抽出されやすくなります。
大型焙煎機で直火で大量に焼こうとすると、火加減が難しく表面ばかり焦げてしまい、豆のふくらみも悪くなりがちになります。
それゆえ、大型焙煎機は熱風式や半熱風式に頼ることが多いですが、これは表面的にはきれいに焼けますが、欠点として水分が十分に抜けにくいということがあるようです。
余分な水分が十分に抜けていないと、時間の経過とともに残った水分が表に出てきて、コーヒーの味が劣化してしまいます。
よくお客様に、「樹の香のコーヒーは”嫌な酸味”が全くないね」と言われますが、それはきちんとハンドピック(選別)されているということと、もう一つ余分な水分がしっかりと抜けているからだと思います。
直火式小型焙煎機は釜が小さいので、内部に高温の熱がこもりやすくなります。これにより、ふっくらとしわの良く伸びた美味しいコーヒーが焼けるのです。
では、直火式小型焙煎機であれば、だれでも簡単に美味しい珈琲が焼けるのかと言えば違います。当然ですが、そこには技術が必要です。
むしろ直火式は、店によって味の個性が出やすい反面、技術が伴わないと、水分がきちんと抜けず、えぐみや嫌な酸味が出やすくなるのです。
私はこの点、前職が調理師だったことが、非常に役に立ちました。
火力に対して排気量をどの程度にしたらよいか、感覚的につかめるようになるまで、それほど時間を要しませんでした。
焙煎機の使用に慣れてくると、それはさらに加速し、かなり少量の焙煎でも、えぐみや嫌な酸味のない、それでいて十分に旨味のあるコーヒーが焼けるようになりました。
つい最近では、人から依頼され、中国雲南のコーヒーを1.65sという少量で焼いたことがありますが、普段から少量焙煎を得意としているので、依頼者に喜んでもらえるコーヒーを焼くことができました。
少量焙煎の最大のメリットは、やはり鮮度の良さを維持できるということでしょうか。それと、興味を持ったコーヒーを、テストで少量だけ焙煎して試すことができるという点です。
実際の焙煎方法について語り始めると、専門的になってしまいますので、ここでは多くを語りませんが、直火式小型焙煎機と技術の結晶であるコーヒーを飲んでいただければ、違いに気づかれると確信しています。実際、開業以来、樹の香の多くのお客様が実感されています。
多くを語りすぎるのは、自信のなさを言葉という武器で武装するようなもの。
子供を見れば、その親が分かるように、我が子であるその店のコーヒー豆を見れば、語らずとも焙煎士の技術はある程度分かるものです。
自動車は新車、焙煎機は中古?
トヨタ2000GTやヨタハチのような車でなければ、一般的に自動車は新車が良いですね。
実は、焙煎機に関しては新品より中古が良いのです。欲を言えば、使い込んでいるけど手入れの行き届いた、日本製の焙煎機ならなお良いです。
新規開業される方は、良い中古品を探されると良いと思います。
日本製の焙煎機は、普通に使ってきちんとメンテナンスしていれば、消耗品の交換以外、ほとんど壊れることがありません。
それどころか、使い込むほどにコーヒー豆の油脂分がまわって、まろやかな独特の甘みのあるコーヒーが焼けるようになります。
私も10年以上、今の焙煎機を使ってきて、それを本当に感じるようになりました。
今まさに釜から取り出したばかりの、本当の焼きたての香りを味わえるのは焙煎士の特権ですが、ここ数年でその瞬間の甘〜い香りが格段に変わってきました。
フルーツをカラメル状にしたような、甘く香ばしい香りが瞬間に広がり、思わずその場でコーヒー豆を食べたくなってしまいます。
このまろやかさが、コーヒーの抽出エキスにも確実に影響していると思います。
焙煎機は、煙突掃除などのメンテナンスが、時々必要です。年1、2回くらいは、煙突以外も本体を分解して、大掃除をします。
煙突掃除をする時は、きれいにし過ぎないことが大切です。科学的には分かりませんが、煙突内や釜に長年かけて付着しているコーヒーの油脂分も、まろやかなコーヒーを焼くのに一役買っていると、経験上感じています。きれいにし過ぎない分、小まめに掃除しなければなりませんが、だからこそ古くなっても、いつまでも現役で美味しいコーヒーを焼かせてくれるのです。あぁ、私も古くなっても、いつまでも良い仕事をして、家族に見放されないようにしなければ。。。
では、長年使いこんだ中古の焙煎機のほうが有利ということになりそうですが、美味しいコーヒーのために、年数かけて大切にメンテナンスしてきたことも、自家焙煎屋の大事な技術の一つと考えれば、当然そうだと自信を持って言えます。
これからも、さらに美味しいコーヒーのために、この愛すべき相棒(焙煎機)とともに、歩んでいきたいと思っています。
小型焙煎機について
<参考>
コーヒー焙煎機・コーヒーミルの 株式会社富士珈機 フジローヤル
関連ページ
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